第12回 事業再構築補助金の概要

ポストコロナ・ウイズコロナ時代の経済社会の変化に対応すべく中小企業が行う事業再構築を支援する事業再構築補助金。第12回の申請が開始されました。
第12回は大幅な見直しが図られ、要件の変更が多いです。認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の当事務所が概要を解説していきます。

【スケジュール】
  • 公募開始: 令和6年4月23日(火)
  • 申請期間: 令和6年5月20日(月)~ 令和6年7月26日(金)18:00
  • 交付候補者採択発表: 令和6年10月下旬~11月上旬頃予定
  • 補助対象事業の実施期間: 交付決定日から12か月以内(候補者の採択決定日から14か月以内)
  • 応募方法: 電子申請により応募 

※電子申請はGビズIDを取得してからの申請となります。
GビズIDはマイナンバーカード経由による取得申請は即日発行ですが、郵送では1週間程度かかります。
アカウント未登録の場合、まずは早めにご準備ください。

【第12回公募の概要】

今回の公募により今までの申請枠が見直され、6つから3つとなりました。今なおコロナの影響をうける事業者に対する支援へ重きが置かれています。

出典:経済産業省 事業再構築補助金 第12回公募の概要資料

【各申請枠の要件】

各枠共通の必須要件は次のA、B、Cです。

A:  事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である。
業再構築は以下の6類型指します。
「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靱化」


B:  事業計画を金融機関等や認定支援機関と策定し、確認を受けていること
※補助事業を実施する場合に金融機関等から借入等の資金調達を受ける場合は、金融機関等からの「金融機関による確認書」が必須です。
補助事業を自己資金のみで賄う場合は認定支援機関の確認のみで要件を満たします。


C: 付加価値額 (※付加価値額=人件費+営業利益+減価償却費)
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3.0~5.0%(事業類型により異なる)以上増加すること

又は 従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率3.0~5.0%(事業類型により異なる)以上増加すること
※ただし、ものづくり補助金等とは異なり、実績報告が必須ではありません。
成長分野進出枠(通常類型)

成長分野に向けた大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を支援します。

主な要件●必須要件A~C。Cについては付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加
●【売上拡大要件】を満たして申請する場合、次の要件をいずれも満たすこと
① 事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させること
② 取り組む事業が、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
●【売上縮小要件】を満たして申請する場合、次の要件をいずれか満たすこと
① 過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること
② 地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
補助額    【従業員数20人以下】 100万円~1,500万円(2,000万円)
【従業員数21~50人】 100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数51~100人】 100万円~4,000万円(5,000万円)
【従業員数101人以上】 100万円~6,000万円(7,000万円)
 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
補助率【中小企業】  1/2(2/3)【中堅企業】  1/3(1/2)
成長分野進出枠(GX進出類型)

ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」の14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者の事業再構築を支援します。
グリーン成長戦略「実行計画」の14分野は以下の通りです。
※補助上限額が高く、大規模な設備投資にも活用可能です。製造業・建設業等で14分野に関連する事業を行っている場合は検討をおすすめします。

出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(広報資料)

主な要件●必須要件A~C。Cについては付加価値額の年平均成長率4.0%以上増加
●さらに以下の要件をいずれも満たすこと
①  事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させること
②  取り組む事業が、グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当すること
補助額   【従業員数20人以下】 100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数21~50人】 100万円~5,000万円(6,000万円)
【従業員数51~100人】100万円~7,000万円(8,000万円)
【従業員数101人以上】 100万円~8,000万円(1億円)
【中堅企業等】    100万円~1億円(1.5億円)
 ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
補助率【中小企業】  1/2(2/3)【中堅企業】  1/3(1/2)
コロナ回復加速化枠(通常類型)

今なおコロナの影響を受ける事業者への支援に重点化。
コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や事業再生に取り組む事業者を支援します。
※新規借入ではなく、借換が対象です。
補助上限額が低めに設定されていますが、要件が他の申請枠と比較し緩やかなため、今もコロナの影響を受けており、コロナの借換要件に該当する事業者の皆様に経営改善の突破口としたいお勧めしたい申請枠です。

主な要件●必須要件A~C。Cについては付加価値額の年平均成長率3.0%以上増加
●必要要件に加え、以下の要件をいずれかを満たすこと
① コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること
② 再生事業者(以下のⅠ又はⅡであること)
Ⅰ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定中の者
Ⅱ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定済かつ再生計画成立後3年以内の者
補助額  【従業員数5人以下】 100万円~1,000万円
【従業員数6~20人】 100万円~1,500万円
【従業員数21~50人】100万円~2,000万円
【従業員数51人以上】 100万円~3,000万円
補助率【中小企業】  中小企業】2/3。ただし次の補助上限額までは3/4
 従業員数5人以下の場合→400万円、6~20人→600万円、21~50人→800万円、51人以上→1,200万円)
【中堅企業】1/2。ただし次の補助上限額までは2/3
 従業員数5人以下の場合→400万円、6~20人→600万円、21~50人→800万円、51人以上→1,200万円)
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

最低賃金類型では、特に最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者を支援します。
※コロナ借換保証等による借換要件を満たせば、補助率が上がりますが、必須ではありません

主な要件●必須要件A~C。Cについては付加価値額の年平均成長率3.0%以上増加
●必要要件に加え、以下の要件を満たすこと
① コロナ借換保証等で既往債務を借り換えていること(任意)
② 2022年10月から2023年9月までの間で、3か月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること
補助額   【従業員数5人以下】 100万円~500万円
【従業員数6~20人】100万円~1,000万円
【従業員数21以上】 100万円~1,500万円
補助率【中小企業】  3/4(2/3)【中堅企業】  2/3(1/2)※()内は、要件①を満たさない場合
規模拡大・大幅賃上げへの支援

規模拡大・賃上げに取り組む事業者を重点的に支援します。
成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠に申請する事業者が同時に申請可能です。

卒業促進上乗せ措置

主な要件成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠の補助事業の終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること
従業員規模
補助額
成長分野進出枠・コロナ回復加速化枠に準じる
補助率【中小企業】  1/2【中堅企業】 1/3

中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

主な要件成長分野進出枠又はコロナ回以下の要件をいずれも満たすこと
① 成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠の補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
② 成長分野進出枠又はコロナ回復加速化枠の補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年平均成長率1.5%以上増員させること
補助額 100万円~3,000万円
補助率【中小企業】  1/2【中堅企業】 1/3
サプライチェーン強靱化枠

国内サプライチェーンの強靱化の観点から、ポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者へ支援します。

主な要件  ●必須要件A~C
・Aについては「国内回帰」または「地域サプライチェーン維持・強靱化」に限る。
・Cについては付加価値額の年平均成長率5.0%以上増加。
●必要要件に加え、以下の要件のいずれも満たすこと
① 取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)
② 取り組む事業が、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
③ 下記の要件をいずれも満たしていること
⑴経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること
⑵IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っていること
④ 下記の要件をいずれも満たしていること
⑴交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと
ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと
⑵事業終了後、事業年度から3~5 年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させる取組であること
⑤ 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること
補助額   1,000万円~3億円※建物費を含む場合は5億円
補助率【中小企業】1/2【中堅企業】  1/3
【対象経費】

※補助対象となる経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資と明記されていることから、事業計画の際は設備投資に当たる経費(建物費、機械装置・システム構築費)を対象経費に含めます。

<補助対象経費の例>

  • 建物費
    (建物の建設・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復、貸し工場・貸店舗等の一時移転)
  • 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費
  • 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費
  • 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費
    ※専門家経費については応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外
  • 広告宣伝・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
  • 研修費(教育訓練費、講座受講等)
  • 廃業費(成長分野促進枠(通常類型)のみ)
【第11回からの変更点】

①申請枠が6つから3つに簡素化
第12回公募での「成長分野進出枠」は、第11回公募までの「成長枠」「産業構造転換枠」「グリーン成長枠(エントリー)(スタンダード)」が、集約された申請枠となります。
第11回公募の最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠の要件にあった売上減少要件はなくなりました。

②資金提供を受ける場合の金融機関要件の追加

③事前着手制度の原則廃止
事前着手制度とは補助金交付前に発注・購入した設備やサービスについても補助経費の対象にできる制度です。
事業再構築補助金の第11回公募までは事前着手制度が実施されていましたが、事業再構築補助金第12回公募からは、原則廃止になりました。
ただし、事業再構築補助金第10回・第11回公募において、事前着手が可能であった申請類型の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、事業再構築補助金第12回公募において、コロナ回復加速化枠・サプライチェーン強靭化枠に申請する場合のみ、事前着手を可能としています

④コロナ借換要件・加点の追加
前述したコロナ回復加速化枠だけでなく、コロナ借換加点が追加されました。
コロナ借換加点として挙げられる借換保証は、以下の通りです。
※借換については、金融機関・保証協会の審査で1か月以上かかる場合があります。
また、伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)については、6月30日で制度が終了します。
コロナ借換保証を検討されている事業者様は、取引のある金融機関にすぐにご相談ください。

・伴走支援型特別保証(コロナ借換保証)
・コロナ経営改善サポート保証
・新型コロナウイルス感染症特別貸付

・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
・新型コロナ対策資本性劣後ローン
・生活衛生新型コロナ対策資本性劣後ローン
・[新型コロナ関連]マル経融資
・[新型コロナ関連]生活衛生改善貸付
・[新型コロナ関連]沖縄雇用・経営基盤強化資金

⑤「申請書類」について事業計画書に加え、事業者特定情報をマスキングした事業計画書も提出が必要
補助金審査に必要な、事業計画書は原本に加えて、事業者名や代表者名などの申請者を特定できる 情報をマスキング処理したものを別途提出することが必須となりました。

⑥口頭審査の実施
一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて、オンラインによる口頭審査を実施。
事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について審査。

【審査項目】

<書面審査項目>

  • 補助対象事業としての適格性
    補助対象事業の要件を満たすか。事業再構築指針に沿った取組であるか。等
  • 新規事業の有望度
    継続的に売上・利益を確保できるだけの規模を有しているか。自社にとって参入可能な事業か。等
  • 競合他社と比較して自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か。等
  • 事業の実現可能性
    事業化に向けた、課題の検証・解決方法、スケジュールが明確かつ妥当か。
    最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できるか。充分な体制を確保出来ているか。等
  • 公的補助の必要性
    川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業であるか。
    補助事業として費用対効果が高いか。地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。等
  • 過剰投資の抑制
    特定の期間に、類似のテーマ・設備等に関する申請が集中してなされている場合には、一時的流行による過剰投資誘発の恐れが
    あるため、別途審査を実施。過剰投資と判断された場合には、大幅に減点。
【まとめ】

採択される申請書

①申請書類のうち要となるのが事業計画書です。
審査員がよく分かる説得力のある事業計画書とするために、以下の点に留意します。
・SWOT(強み、弱み、脅威、好機)等を用い、自社の経営や事業の状況を客観的に示す。
・申請する新規事業に対し、補助金をどのように用いたら実現できるのか、具体的な数値や表で示していく。
・審査項目を意識しながら新規事業への熱い思いをアピールする。
事業者様が自らの言葉で書いていくべきですが、自社の状況を書くとなると謙遜しすぎたり、新規事業への熱い思いが強すぎて内容に一貫性がないということもあります。
認定支援機関等のアドバイスを受けながら、ポイントを押さえた事業計画を策定しましょう。

②公募要領をよく見直し、書類不備がないようにする。
不備がないということで、公募要領をよく読み理解している(=補助金の趣旨を理解している)という客観的アピールにもつながります。

③加点項目をとっていく。
審査における加点項目は以下とされています。
パートナーシップ構築宣言済みの事業者に対する加点やEBPMの取組に対する加点は短期間で取りやすい項目です。申請までに比較的加点項目をとっていきましょう。

・コロナ借換加点
・コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)の申請事業者に対する加点
・経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点
・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点
・事業再生を行う者に対する加点
・特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点
・サプライチェーン加点
・健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点
・大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点
・事業場内最低賃金引上げを実施する事業者に対する加点
・ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点
・技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者に対する加点


④最新の情報を入手
公募期間中に要件等が変更になる場合もあります。最新の情報を入手するためにも事業再構築補助金の公式ページをご確認ください。

入金までの期間
補助金の入金までのプロセスは以下のとおりです。

申請→申請内容の審査→採択者決定・交付決定→申請した補助事業開始→実績報告作成・提出→確定検査→補助金の入金

申請から補助事業実施、入金までおよそ1年半かかります。また実績報告提出後の確定検査により、実際の入金額が交付決定額を下回ることもあります。
補助事業の実施により運転資金が不足し、会社全体の財務状態が悪化しないよう、綿密な資金計画が大切です。

変更点の多い第12回。審査の厳格化も予想されていますが、事業再構築補助金を使って新たな事業に挑み、経営の立て直しの転機とされてはいかがでしょうか?

当事務所は認定支援機関として、審査項目にそった事業計画作成支援から採択後のサポートまでトータルに伴走支援いたします。


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